現在のデジタルマーケティングでは、広告がクリックされた後7日間程度のCV(Conversion:サイト来訪者数、申し込み数など)をCPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)で評価する手法が一般的だ。
一方で、検討期間の長い商材や、ブランディング、エンゲージメントの強化を目的としたマーケティング活動においては、未来の顧客を中長期で開拓・育成していく「ナーチャリング」が重視されつつあり、デジタル広告の効果を中長期で評価する指標が必要となっている。
電通の調査では、広告接触後7日以内の短期的な申し込みに対して、広告接触後6カ月以内の中長期的な申し込みは平均12倍の件数が存在する事例も確認できた※1。半年後までの効果を加味して広告評価ができれば、より精緻で、企業の目的に合致したデジタル広告の最適化が可能になる。
※1:自動車系、教育系、嗜好品系の企業の広告で、7日以内のクリック経由CVを1とした時の、180日以内のビュー経由CVの比率を測定し、平均して約12倍と算出。
電通では、データクリーンルーム※2の大規模な顧客基盤に基づく、広告接触履歴や興味関心の属性などから、申し込みや購入に至る確率を推定する予測モデルを機械学習によって構築。このモデルによって計算された新規ユーザーの申し込み確率が新指標「ナーチャリングスコア」であり、広告の中長期効果を示す。
※2:プラットフォーム事業者が広告主・広告会社などに提供するクラウド環境。プライバシーが保護された環境下で、プラットフォーム事業者の保有データと、企業の1st Partyデータ、その他複数の外部データを、さまざまなニーズに応じて柔軟に統合、分析することが可能だ。
また、2016年からデータクリーンルームを利用し蓄積してきた知見をベースに、2022年より本スコアの研究開発を開始し、複数のデータクリーンルームで実用レベルのモデルの作成に成功した。
予測モデルは過去のデータに基づいて計算されたものだが、これを現在のデータに適用することで、これまでは測定しづらかった将来の申し込み確率を現時点で推測できるようになる。例えば過去半年間のデータに基づいて学習されたモデルを作成し、今日広告を配信したユーザーのスコアをモデルに基づいて計算することで、向こう半年の申し込み確率をリアルタイムに評価し、広告の予算配分や入札調整といった日々の運用の意思決定に活用することが可能だ。
実証実験では、交差検証の結果、予測モデルが70%以上の高い精度を示す。また、金融系業種での検証では、サイト来訪済のユーザーに対するリターゲティング施策に比べて、潜在層向けの動画施策の方が中長期効果(ナーチャリングスコア)で見ると効率が良い、という評価の逆転現象も。これは、中長期的な事業成長のためには、動画広告に適切に予算を配分することが重要であるという示唆でもあると考えられる。
「ナーチャリングスコア」は、当社が提供するさまざまなデータクリーンルーム活用ソリューション(TOBIRAS Insight / TOBIRAS Activation / TOBIRAS Measurement / TOBIRAS Optimization)のうち、測定・評価に関するカテゴリー「TOBIRAS Measurement」のプロダクトの一つで、システム基盤「TOBIRAS」※3と連携することでスピーディな運用を実現します。
※3:複数のデータクリーンルーム環境を一元管理する「TOBIRAS」を開発
今回紹介した電通は、今後もナーチャリングスコアが利用可能なデータクリーンルームの拡大を進めるとともに、予測モデルに基づく新指標の開発を通じて、顧客企業のマーケティング課題の解決と成長に貢献していく。
(出典:電通 Webサイト)