​大日本印刷、「ライトアニメ」事業をスタート 新たなエンタメ市場の開拓目指す

大日本印刷株式会社(以下、DNP)は9月7日、従来の手法と比較して、アニメーション制作にかかる時間やコストを大幅に抑制できる新しいフローを開発し、「ライトアニメ」の名称で、2022年8月よりサービス提供を開始したと発表した。より気軽に・早く・多様なアニメ作品を楽しみたいという生活者のニーズに応えて、低コストかつタイムリーにアニメを提供したいという想いから、この事業の総称を「ライトアニメ」とした。

■「ライトアニメ」開発の背景と狙いとは

「ライトアニメ」でアニメ化した作品イメージ(『どっちもどっち』海王社)

「ライトアニメ」でアニメ化した作品イメージ(『どっちもどっち』海王社)

日本アニメのグローバルな生活者向け市場の規模は2020年に2兆4261億円となり(日本動画協会「アニメ産業レポート2021」)、国内でコロナ禍の影響を受けたものの、海外の順調な売上にも支えられ、さらなる成長が期待されている。

一方、限られた人気マンガ作品のアニメ化が進むなかで、制作期間の長さや膨大なコストを理由に、コアなファンを抱えながらもアニメ化に至らない多くの優れたマンガ作品も存在する。また、SNSや動画の定額制(サブスクリプション)サービスの普及にともない、気軽にコンテンツを「倍速視聴」や「ながら視聴」などで、たのしむ人が増えてきた。多種多様な新しいアニメ作品をタイムリーにたのしみたいというニーズに対して、制作の負荷の高さや、人材不足等による制作現場の労働環境の悪化などが課題となっている。

このような課題の解決に向けて、DNPは今回、長年の出版印刷事業で培ったコンテンツ加工技術等を応用・発展させた独自のアニメ制作手法「ライトアニメ」を開発した。この新しい制作フローを軸として、グローバル市場も視野に入れたアニメ関連のエンタテイメント事業を展開していく。

■「ライトアニメ」事業の3つの特徴

一つ目は、原作のマンガの原稿を基に、アニメ用の原稿を描き起こす従来手法に対して、「ライトアニメ」ではマンガ原稿の活用を基本としている。セリフの吹き出しなどを削除したマンガ原稿に、着彩や分割を行い、必要に応じてアクションを加え動画にすることで、制作期間とコストを大幅に削減。この手法により、従来の制作手法ではアニメ化が難しかった多くの作品や、原画のタッチを生かしたい作品なども、比較的容易に市場に供給することが可能だ。制作時間は従来平均の約12分の1、費用は約10分の1での提供を目指す。

二つ目は、制作したアニメ作品については、DNPが事務局となり、動画配信プラットフォームに向けて放送権を販売。また、DNPグループが運営するハイブリット型総合書店「honto」をはじめとする電子書籍販売サイトや、様々なデジタルコンテンツ配信サービスを通して、生活者に作品の提供・販売を行う。その第一弾として、2022年8月より「honto」にて、海王社の『どっちもどっち』のアニメーション付電子書籍の販売※を開始した。
国内市場に加えて各国・地域の市場に対しても、生活者の多様なニーズに合わせたタイムリーなアニメ作品の提供・配信につなげていく。

※海王社の『どっちもどっち』のアニメーション付電子書籍:https://honto.jp/swamp/cp/2022/docchimodocchi.html

三つ目は、DNPは、制作スタジオ「DNP Light Anime Production」を開設して、コンテンツホルダーやパートナー企業、社外のクリエイターとの連携体制を強化。これにより、コストパフォーマンスがより高いアニメ作品の安定供給を目指す。

■今後の展望について

マンガ業界では、デジタル技術を活用した縦スクロール化や多言語化などの展開が加速している。DNPはこうした動きを先導するとともに、その先の展開として「ライトアニメ」を見据え、国内外のあらゆるコンテンツのファンに向けて、アニメ作品をタイムリーに届ける仕組みづくりを実現していく。

また、2023年3月までに、国内での放送を想定したアニメーションの制作を開始するほか、グローバル市場へのコンテンツの輸出事業の開始、最先端のAI技術を持つ企業との提携などを予定している。この事業全体で、2025年度までに30億円の売上を目指し、中長期的には世界中の生活者が多様なコンテンツを気軽に楽しめる、エンタテイメントの新しい価値を創出を目指す。

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