■「ライトアニメ」開発の背景と狙いとは
日本アニメのグローバルな生活者向け市場の規模は2020年に2兆4261億円となり(日本動画協会「アニメ産業レポート2021」)、国内でコロナ禍の影響を受けたものの、海外の順調な売上にも支えられ、さらなる成長が期待されている。
一方、限られた人気マンガ作品のアニメ化が進むなかで、制作期間の長さや膨大なコストを理由に、コアなファンを抱えながらもアニメ化に至らない多くの優れたマンガ作品も存在する。また、SNSや動画の定額制(サブスクリプション)サービスの普及にともない、気軽にコンテンツを「倍速視聴」や「ながら視聴」などで、たのしむ人が増えてきた。多種多様な新しいアニメ作品をタイムリーにたのしみたいというニーズに対して、制作の負荷の高さや、人材不足等による制作現場の労働環境の悪化などが課題となっている。
このような課題の解決に向けて、DNPは今回、長年の出版印刷事業で培ったコンテンツ加工技術等を応用・発展させた独自のアニメ制作手法「ライトアニメ」を開発した。この新しい制作フローを軸として、グローバル市場も視野に入れたアニメ関連のエンタテイメント事業を展開していく。
■「ライトアニメ」事業の3つの特徴
二つ目は、制作したアニメ作品については、DNPが事務局となり、動画配信プラットフォームに向けて放送権を販売。また、DNPグループが運営するハイブリット型総合書店「honto」をはじめとする電子書籍販売サイトや、様々なデジタルコンテンツ配信サービスを通して、生活者に作品の提供・販売を行う。その第一弾として、2022年8月より「honto」にて、海王社の『どっちもどっち』のアニメーション付電子書籍の販売※を開始した。
国内市場に加えて各国・地域の市場に対しても、生活者の多様なニーズに合わせたタイムリーなアニメ作品の提供・配信につなげていく。
※海王社の『どっちもどっち』のアニメーション付電子書籍:https://honto.jp/swamp/cp/2022/docchimodocchi.html
三つ目は、DNPは、制作スタジオ「DNP Light Anime Production」を開設して、コンテンツホルダーやパートナー企業、社外のクリエイターとの連携体制を強化。これにより、コストパフォーマンスがより高いアニメ作品の安定供給を目指す。
■今後の展望について
また、2023年3月までに、国内での放送を想定したアニメーションの制作を開始するほか、グローバル市場へのコンテンツの輸出事業の開始、最先端のAI技術を持つ企業との提携などを予定している。この事業全体で、2025年度までに30億円の売上を目指し、中長期的には世界中の生活者が多様なコンテンツを気軽に楽しめる、エンタテイメントの新しい価値を創出を目指す。