DX推進が加速する今、印刷物を発注する側が求めるものは?

一般社団法人ジャパンイーブックス活用研究会(以下、ジャパンイーブックス活用研究会)は7月26日、行政機関・民間企業に勤めており印刷会社に印刷物を発注する方を対象に、「DX推進における印刷物を発注する側の課題」に関する調査を実施した。

近年、さまざまな分野でDXが推進されている。デジタル技術を駆使して人々の生活や企業の業務に変革をもたらすことをDXと呼ぶが、そのDXを推進するために不可欠なのが「ペーパーレス化」だ。

紙媒体が衰退する時代において、印刷業界にも大きな変革が求められている。例えば、文書を電子化しインターネット上で公開すれば、印刷物にするよりも軽量化やコストダウンが期待できるほか、自治体が発行する広報誌などはより多くの方の目に留まりやすいといった多くのメリットがある。しかし反対に、IT環境やツール、アプリの選定、電子化する際の手間、または紙媒体での保存が必要な重要書類は電子化しにくいといった別の課題も考えられる。

印刷物を発注する側は、今後、印刷物にどのようなことを求めているのか。行政機関や民間企業のDXに対する姿勢なども関係するのかもしれない。

そこで今回、インターネット上で宮崎県の電子書籍を無料で閲覧できる地域特化型電子書籍ポータルサイト「Japan ebooks」を運営する一般社団法人ジャパンイーブックス活用研究会は、行政機関・民間企業に勤めており印刷会社に印刷物を発注する方を対象に、「DX推進における印刷物を発注する側の課題」に関する調査を実施した。

Japan ebooks:https://www.japan-ebooks.jp
ジャパンイーブックス活用研究会:https://www.japan-ebooks.jp/blank

■どんな印刷会社に何の印刷物を発注している?

広告を発注している方が4割以上と最も多い。また、カタログや案内状など、さまざまな物を頼んでいることが分かる。

印刷会社を選ぶ際は、どのような点をポイントとしているのか?

そこで、「印刷会社の選考の基準となるのはどのようなポイントですか?(複数回答可)」と質問したところ、「費用(見積もり次第)(66.1%)]と回答した方が最も多く、次いで「納期(期限に間に合うか)(50.3%)」、「希望どおりに印刷できるか(サイズ・制作)(42.4%)」と続いた。

会社によって印刷物の予算も異なるが、費用を基準に印刷会社を選んでいる人が多い結果だ。

■印刷物を発注する際に、疑問や不満を感じたことはある?

「印刷物を発注する前に、困ったことや疑問、不満や不安を感じたことはありますか?」と質問したところ、7割以上の方が「とてもある(28.1%)」「ややある(45.6%)」と回答した。

多くの人が疑問や不安を感じたことがあるようだが、印刷物を発注する前に感じる疑問や不安とは一体どのようなことなのか?

「とてもある」「ややある」と回答した方に、「感じた疑問、不満や不安について近いものを教えてください(複数回答可)と質問したところ、「印刷物は今の時代にそぐわないのではないか(41.8%)」と回答した方が最も多く、次いで「印刷しても読まれないのではないか(34.7%)」、「このまま印刷物を続けて問題はないのか(33.3%)」と続いた。

DX推進が加速するなかで、印刷物は時代に合わなかったり、読まれなかったりと疑問や不安を感じている。

■印刷物を発注する側のDXはどのくらい進んでいる?

「ご自身の社内(庁内)のDXはどのくらい推進していますか?」と質問したところ、「とても推進している(11.8%)」、「ある程度推進している(39.5%)」、「あまり推進していない(31.4%9」、「ほとんど推進していない(17.3%)」という回答結果になった。

DXを推進している組織が半数以上いる一方で、推進していないところも4割以上とまだまだ多いようだ。では、組織内のDXについて相談できる相手などはいるのか?

続いて、「社内(庁内)のDXに関して誰か(どこか)に相談していますか?(しましたか?)」と質問したところ、「はい(46.1%」、「いいえ(53.9%)」という回答結果になった。

差はそれほど大きくはありませんが、社内のDXに関して相談していない方のほうが多いようだ。では、保存性の高い資料などはデジタルアーカイブ化されているのか?

続いて、「永久保管性の高い紙資料はデジタルアーカイブ化されていますか?」と質問したところ、「はい(54.0%)」、「いいえ(46.0%)」という回答結果になった。

保存性の高い紙資料がデジタルアーカイブ化されていない組織もまだまだ多いようだ。DX推進が加速している中ですから、インターネットでの検索や活用が可能になるデジタルアーカイブ化について検討する必要があるのかもしれない。

■印刷物だけでもだめ?デジタルだけでもだめ?

「広報誌、観光パンフなど従来印刷物で行ってきた施策をデジタルに置き換える予定はありますか?」と質問したところ、「全て置き換える予定(12.1%)」、「ある程度は置き換える予定(42.2%)」、「現在行っている施策のまま(置き換える予定はない)(23.1%)」、「分からない(22.6%)」という回答結果になった。

全てデジタルに置き換える、あるいはある程度置き換える方が半数以上いるが、現在のままだったり、分からないという人が4割以上とデジタル化に消極的な組織もまだまだ多い様子。

しかし、広告や広報物を全てデジタルに置き換えれば良いという訳ではない。では、紙資料とデジタル資料はどのくらいの割合が適正だと考えているのか?

続いて、「広告や広報物に対して、紙資料とデジタル資料(スマホ・タブレット・PC9の比率はどれくらいが適正だと思いますか?810分率対比)」と質問したところ、「5:5(21.5%)」と回答した人が最も多く、次いで「7:3(13.5%)」、「6:4(12.9%」と続いた。

紙資料とデジタル資料の比率は5:5が適正と考えている方が多く、状況などに合わせて使い分けた方が良いと考えているのかもしれない。

■今後も紙資料として必要だと思う印刷物とは


・押印が必要な紙媒体(20代/女性/埼玉県)
・パンフレット(40代/男性/大阪府)
・契約書(40代/女性/京都府)
・領収書(50代/女性/宮城県)



今後も紙資料として必要だと思う印刷物はさまざまあることから、それぞれの組織内で話し合って紙資料とデジタル資料を使い分けることが大切かもしれない。

■DX推進における印刷物を発注する側の課題が明らかに!

今回の調査で、印刷会社に広告や会社のカタログなどを発注している方が多いことが分かった。費用を基準として印刷会社を選んでいるものの、そもそも今の時代に印刷物は合わないのではないかなど疑問や不安を感じている人も少なくない。

DX推進に関して、企業によって推進状況は異なるが、紙資料とデジタル資料は5:5という比率が適正だと思っている人が多く、業務などによって使い分けをしてより働きやすい環境を整える必要があると言えそうだ。

なお、今回「DX推進における印刷物を発注する側の課題」に関する調査を実施したジャパンイーブックス活用研究会は、インターネット上で全国各地(2022年8月現在28都道府県)の地域の自治体などが発行する印刷物を電子書籍で閲覧できる地域特化型電子書籍ポータルサイトだ。

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